ETIAS実施、2025年に延期の公算

ETIAS実施、2025年に延期の公算

当初2021年に開始される予定だった欧州渡航情報認証システム(ETIAS)は、またしても延期に直面することになりそうだ。数人のEU閣僚との情報交換に基づき、ETIASの導入は2025年に延期されたとメディアで報じられている。この頓挫は、パリ五輪とEU出入国管理制度の遅れに起因する予期せぬ課題と複雑さが重なった結果である。本稿では、延期の理由と、EU域内の旅行者や安全対策に与える潜在的な影響について考察する。

ETIASイニシアチブ

2016年に発表されたETIASは、ビザ免除国からの旅行者がシェンゲン圏に入国する前に事前審査を行うことで、シェンゲン圏のセキュリティを強化することを目的としていた。これは、安全保障上の脅威のリスクを軽減しつつ、より安全で効率的な旅行体験を実現することを目的としていた。

予期せぬ問題

ETIASの導入が遅れている主な理由は、システムの開発とテストの段階で発生した予期せぬ問題である。これらの問題により、システムの導入準備が整うかどうかが懸念されている。

  • 技術的課題:ETIASはビザ免除渡航者の申請を処理する複雑なシステムを含んでいる。ソフトウェアの不具合やデータ統合の問題など、技術的な課題が開発プロセスを遅らせている。
  • データ・プライバシーに関する懸念:欧州連合(EU)は、データ・プライバシーの保護と、ETIASがGDPR規制に準拠していることの確認に警戒を強めている。こうした懸念への対応は、当初の予想以上に時間がかかることが判明している。
  • セキュリティのアップグレード:ETIASをサポートするために必要なセキュリティ・インフラの大幅なアップグレードが必要となり、システムの導入がさらに遅れている。

パリ・オリンピックの複雑さ

2024年に予定されているパリ・オリンピックも、ETIASの遅れに大きな役割を果たしている。オリンピックの準備でリソースと注意が集中し、ETIASの導入から焦点がそれてしまったのだ。

  • 資源配分:インフラのアップグレードやセキュリティ対策など、五輪のために大規模な投資が必要なため、ETIASの開発に充てられるはずだった資源がそちらに回された。
  • セキュリティ上の懸念:オリンピックのような大規模な国際イベントの開催には、セキュリティ対策の強化が必要である。このため、ETIASプロジェクトからの優先順位が一時的にシフトした。

EU出入国システムの遅れ

ETIASと密接な関係にあるEU出入国システムも遅れに直面している。このシステムはEU域外からの旅行者の出入国を追跡するためのもので、ETIASの目的を補完するものである。

  • 同期の問題:ETIASは旅行者を正確に追跡するため、EU出入国システムのデータに依存している。出入国システムの開発の遅れは、ETIASに連鎖的な影響を及ぼしている。
  • テストと統合:両システムをシームレスに連動させることは複雑な作業であることが判明しており、全体的な延期の一因となっている。

旅行者への影響

ETIASの2025年への延期は、EU域内の旅行者および安全保障にいくつかの潜在的な影響を与える。

  • ビザなし渡航の継続:ビザ免除国からの旅行者は、ETIASが完全に運用開始されるまでは、ETIASの認証なしでシェンゲン協定加盟国を訪問することができる。
  • セキュリティの強化:導入が遅れることは、導入を待つ人々にとっては不満だが、システムのさらなる改良を可能にし、セキュリティ対策の向上につながる可能性がある。
  • 潜在的な不都合:ETIASが導入されれば、第三国からの渡航者は申請手続きとそれに伴う手数料を前もって計画する必要がある。

結論

予期せぬ問題、パリ・オリンピックの複雑化、EU出入国システムの遅延などが、今回の頓挫につながった。旅行者は不便を感じるかもしれないが、この遅延は最終的にシステムの有効性とデータプライバシー遵守を確保することを目的としている。EUが引き続き安全対策を優先する中、ETIASはシェンゲン圏を守るためのパズルの重要なピースであり続けている。