ETIASを使用した旅行体験

ETIASを使用した旅行体験

ETIAS(欧州渡航情報認証制度)は、欧州全体の安全保障を強化し、違法な越境行為を抑制することを明確な目的として、2022年後半に導入される予定です。ETIASが、現在のコロナ禍のような将来の健康危機を防止、または少なくとも抑制するのに役立つことが期待されています。これらはETIASの主な目的ですが、滞在期間や旅行の理由によらず、欧州連合およびシェンゲン圏内への渡航が、将来の訪問者にとってより簡単で、より速く、全体的により良い体験になることが期待されています。

ETIASによって、事前審査のセキュリティチェックが合理化されますか?

はい。現在欧州へビザなしで渡航可能な非EU市民は、疑いの理由がある場合にのみ、国境当局によってチェックされます。治安当局はビザなしの渡航者に関する情報をほとんどまたはまったく持っていないため、国境検問所や空港で行われるチェックは非常に時間がかかり、予定が迫っている渡航者にとって問題となる可能性があります。この問題を解決するには、欧州のビザ制度が考えられますが、そうした制度は、非常に多くの国で一貫性を持ち、アクセスしやすく、理解可能である必要があるため、手続きや技術の面で導入や運用が非常に困難です。そこで、米国当局が使用するESTAと同様の、パスポート検証用の電子的なデジタルリンクシステム、ETIASを導入することになりました。

通常のビザの場合と同様に、ETIASの申請プロセスでは、申請者の個人情報とパスポートに関する情報を記入する必要があります。また、過去の犯罪歴や、伝染病や感染症に重点を置いた重篤な病状に関する詳細を記入しなければなりません。この情報は、EUの複数のデータベースと照合され、その結果に基づいてETIAS認証が付与されるか否かが決定されます。認証を付与された申請者の情報は、ETIASの中央データベースに保存され、権限を持つ機関が迅速にアクセスできるようになります。

ETIAS認証取得済みのパスポートがあれば、保安検査官はスキャンするだけで渡航者が渡航許可を受けていることがわかるため、パスポート保有者の渡航に遅れは生じないはずです。ただし、有効なETIASを所持していても、国境当局の裁量にゆだねられるため、入国する権利が自動的に保証されるわけではありません。

ETIASは渡航時の安全性を高めますか?

はい。ETIASと同様に、欧州およびシェンゲン協定加盟国は、EU以外のパスポート保有者の動きを全域で追跡するための出入国システム(EES)も運用しています。このシステムは、渡航者が欧州の国境を越えるたびに記録し、以下の情報を保存します。

  • パスポート保有者の氏名
  • 使用する渡航書類の種類
  • 生体認証データ(顔画像と指紋)
  • 出入国の日付
  • 出入国の場所

EESは、ETIASと組み合わせることで、不法移民の抑制や、許可された期間を超えて滞在している人、またはその可能性があるとみなされる人の検出に役立ち、欧州におけるさらなるセキュリティスクリーンとなります。

EESは、パスポートへのスタンプのような従来のシステムに代わるもので、滞在先や滞在期間など、より詳細な情報を提供します。入国拒否や、強制送還、または許可された期間を超過した滞在の詳細も記録されます。

このシステムは完全に自動化される予定で、パスポートをスキャンし、許可が下りれば自動的に第三国の市民の入国を許可する機械が設置されます。これは、現在パスポートを手作業で確認してスタンプを押すのにかかっているほどの時間はかからず、数秒で完了するはずです。

ETIASによって待ち時間が短縮されますか?

はい、おそらく今日のすべての渡航者が最も嫌がるのは、列に並んで時間を浪費することでしょう。より迅速でシンプルなプロセスは、空港や、海上ターミナル、国境検問所での待ち時間を短縮するために、指紋や顔のスキャンなどの生体認証情報を提供することに抵抗のないすべての渡航者に歓迎されるでしょう。

ETIASが導入されると、パスポートを素早くスキャンすることで、乗客が渡航に必要な許可を受けていることが輸送当局に示され、EESに付随する生体認証データにより、欧州内を移動する渡航者を監視することができます。

これら2つのシステムが連携することにより、空港や、海上・フェリーターミナル、国際鉄道駅、国境検問所での行列が事実上解消するはずです。

コロナ禍に対するどのような安全策が維持されるのでしょうか?

コロナ禍はまだ続いており、欧州への渡航者が減少しているにもかかわらず、渡航者は依然として空港や海のターミナルで長い列に並ぶ必要があります。ワクチンの接種証明や渡航者位置特定フォームなど、新型コロナウイルス感染症に関する追加書類の確認で、チェックイン手続きが大幅に遅れていますが、この状況は2022年後半に予定されているETIASの導入によって改善されるはずです。なぜなら、ETIAS申請書に健康や病歴に関する項目があり、この情報がチェックインデスクでの処理時間短縮につながる可能性があるためです。

ETIASのデータ保護基準はどのようなものですか?

データ保護はEU当局にとって大きな懸念事項であり、渡航者の個人情報の保護は特に重要です。ETIAS申請書(およびEESデータバンクに記載された情報)に含まれる情報は、個人的でプライベートなものであり、適切に保護する必要があります。

この目的のため、ETIASやEESについて責任を負う機関(ETIAS中央ユニット、ETIAS国内ユニット、SIS(シェンゲン情報システム)を管理するeu-LISA)は、以下を行う必要があります。

  • 暗号化された形式でデータを安全に保管する
  • 権限を与えられ、認識された、責任ある当局にのみデータへのアクセスを許可する

すべての情報は、ETIASの有効期限が切れるまで、またはETIASが最後に拒否またはキャンセルされてから5年間のみ保管されます。

ETIASの導入でどのような改善が期待されますか?

ETIASはパスポートと電子的にリンクしているため、渡航に必要な書類の作成や、それに関連する職員や国境警備要員の作業時間を大幅に短縮することができます。現在、セキュリティや医療に関する審査は到着時ではなく出発地で行われるため、以下のような効果が期待されます。

  • 出発地や国境検問所での待ち行列の低減
  • 欧州全域での安全保障の強化
  • 潜在的な健康リスクに関する審査の改善
  • 外国人渡航者へのより迅速かつ効率的な対応
  • 欧州域内での外国人追跡の改善

もちろん、これらはEU当局者が予測したETIASとEESの利点ですが、これらのすべて、あるいは一部が実現するかどうかについては、時間が経つまでわかりません。