欧州連合(EU)への不規則な国境通過が今年、大幅に減少した。
欧州国境・沿岸警備機関であるフロンテックスによると、2024年1月から9月までの間に、昨年の同時期と比べて42%減少している。
この減少は、欧州が移民を扱う上で直面している変化と課題を示している。
主要ルートにおける移民の劇的な減少
2024年1~9月にEU域外国境を不法に通過しようとした件数は16万6,000件で、2023年同時期の27万9,350件から減少した。
西バルカンルートと中央地中海ルートが最も減少し、それぞれ79%と64%減少した。
これは、歴史的に不法移民が多かったこれらのルートの取締りを強化するEUの努力の成果を示している。
フロンテックスは、この減少を、国境警備の強化と、原産国および通過国との協力強化のおかげだと評価している。
西バルカン半島のルートは、かつてはヨーロッパへの入国が最も多いルートのひとつであったが、ここ数年で最も低い数値となり、2023年の81,800件から2024年には17,000件近くまで減少している。
アフリカ西部と東部国境からの移民の急増
激減したルートがある一方で、心配な増加を記録したルートもある。
東部陸路国境、特にポーランドの東側では、不法越境が192%増加した。これは、ウクライナやシリアといった地域の紛争や政情不安による圧力の高まりを反映している。
西アフリカのルートも非常に混雑し、越境者は100%増加した。マリ、セネガル、モロッコからの移民がこのルートを利用することが増え、検出数は昨年の2倍になった。
この増加は、特定のルートでの移民を減らす取り組みが、EUへの新たな道を探す人々を後押ししている可能性を示唆している。
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EUの国境管理におけるフロンテックスの役割
EUの国境におけるフロンテックスの継続的な存在は、移民の動向を管理する上で重要である。同機関は欧州全域に3,000人以上の警官を配備し、非正規移民の阻止と登録を支援している。
フロンテックスの存在は、主要ルートに沿った横断の数を減らし、EU加盟国が国境をよりよく管理するのに役立っている。
フロンテックスはまた、バングラデシュやチュニジアなどの原産国や、トルコなどの通過国とも協力し、移民が欧州に到着する前に阻止している。
この協力は、中央地中海ルートや西バルカンルートの到着者数を減少させる上で重要な役割を果たしている。
欧州旅行は厳しくなるのか?
避難や就労を求める移民を含め、短期滞在者と長期滞在者の双方にとって、移民規則の変更は新たな課題をもたらす。
EUが国境警備を強化し、他国と協力するにつれ、観光、就労、亡命を問わず、人々の入国が難しくなる可能性がある。
2025年に開始される予定の欧州渡航情報・認証システム(ETIAS)がこれに拍車をかける。EU加盟国以外の訪問者は、たとえビザ免除国からの訪問者であっても、シェンゲン協定加盟国に入国する前に事前審査が必要となる。
ETIASはセキュリティを強化することを目的としているが、特に移民に対する懸念が高まる中、旅行者の遅延やチェックの強化につながる可能性もある。
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増加する新しい規則と国境管理
特定の地域からの不規則な入国者の増加により、EUは移民政策を調整するよう圧力を強めている。
欧州委員会は、移民協定の迅速な実施や庇護ルールの厳格化など、より厳格な措置を提案している。
このような変化は、極右的な見解が国民的議論に影響を与えている欧州全域で、移民問題が政治的に敏感な問題となっていることに起因している。
これを受けて、ドイツ、フランス、イタリアなどの国々は近隣諸国との国境管理を復活させ、シェンゲン圏の自由移動を一時的に停止している。
これらの変化は、シェンゲン圏の完全性を維持しつつ、安全保障と人権のバランスをとるというEUの課題を示している。
次はどうなるのか?
移民のパターンが変化するにつれ、EUは移民の根本原因に取り組みながら国境を管理するという難しい課題に直面している。
フロンテックスは、一部のルートでは不法入国者の規制に成功しているが、他のルートでは増加しており、この課題がまだ解決されていないことを示している。
ETIASの発足と現在進行中の移民政策改革は、欧州全域の旅行に影響を与え続け、長期的には旅行者、移民、EUに影響を与えるだろう。